受験末期にやってたサターンのいろんな意味で末期のアクションＲＰＧ「バロック」――主人公は女顔の美青年で、その他の登場人物もアルル喋りのボーイッシュな少女（プロデューサーは元コンパイル社員……）や綺麗な天使のお兄様など、キャラゲーとしても十分いける程可愛い絵柄で別方面のマニア心をくすぐるのデスが、それら数人のイラスト以外、世界の全てが救い様の無い狂気と頽廃の塊となっていましてテーマは歪んだ妄想、帯キャッチコピーは「四十六億年の妄想が生み出したニュータイプＲＰＧ」、アイテム名は「俺印」「腐肉刑具」「寄生虫」「焼け心臓」等々、その世界観は余りに独特。舞台であるカタストロフ後の荒廃世界には錆びた金属と異形が溢れ、主人公を含めた全ての生き物は重度の妄想を抱えており喋る事は支離滅裂。更に主人公は記憶と言葉を、アルルもどきは苦痛を失ってます。地元住民は鹿角はえた女や首伸びた全身緑色男。その首男を攻撃すると「そうだな、私など死んだ方が良いのかも知れないな」と言い、更に攻撃を続けると「死ね、死ね、その通りだ。私は死ね死ねだ。死ね死ねだぁぁ」、「おおおおおおおお！　うほおおおおお！」と言い１人で悶え出す様なキチガイックな世界で、主人公は何故かさえも分からず感じる罪の意識に苛まれ、それを癒す術を探し「神経塔」に「潜る」。背景はサターンの割に綺麗なポリゴンで、キャラや敵やアイテムは２Ｄイラスト。縮小・拡大で遠近を表現しており、近付くと少々カクカクしてぼやけた絵になりますが、かえって想像力をかき立て、朧気な感じ、手を伸ばしても届かない感じを醸してます。

　それから、バロック世界では殆どの人間が「歪んでしまっている」と言う設定なのですが、その歪ませ方に吹っ切れた潔さを感じました。普通、キャラが「歪む」場合、女性だと「手加減」されますね皆様。例えば「獣人化」とかする時、男性だとほぼ全身ケダモノ化しますが、女性だとせいぜい耳と尾と肉球が付く程度でおいこりゃ違うだろ。また、完全非人間キャラだと、ドラえもんとドラミちゃん、ソニックとアミー、パラッパとラミー、エコアイスミニのペンギン、ぽろりとぴっころ……等の対比で分かる様に、女性キャラだと体色どピンクだったり、まつ毛ぼーぼーだったり、実際誰も使って無い様な過剰女言葉だったり、変なリボンやスカートだったりと、まるで合成着色料ベタベタの駄菓子の如く現実離れした抽象的「女」の記号で塗り固められ、よく考えたら子供向けとは思えない程ケバいキャラが出来上がってしまう事が間々ある訳で、前者に理不尽な都合の良さと覚悟の甘さ、後者にランドセルの性別色分け的不健康な気色悪さを感じてしまう私ですが、このゲームはその辺に関しても全く情け容赦ありません。先述の角女こそ角以外は（気は狂ってますけど）普通の人間で、ある意味可愛いと言え無くも無いのですが、全身にボロ布袋かぶった狂人や、岡本太郎の彫刻みたいにフリーキーでもはや人間に見え無いキャラ等（この様な性別不明な容姿の異形キャラを見て、ふと男性だと仮定してしまうのは我々の中に刷り込まれた悪い癖）が、設定資料を見ると「誰々の娘」とか「元、誰々の部下だった女性」とか書いてあり女性だと分かるのですが、それも「実は女なんだぞ。どうだ驚いたか」と言った感じでは無く「異形化した人物が偶然たまたま二分の一の確率で女性だった」と言った感じで、実にしれっと、自然に設定されていて、個人的に次世代の息吹を感じてしまいました。