災いバレンタイン

(本当にあった話)

 

 

 これ書いてる時点で2000年バレンタインデーが目前に迫って参りましたが、CCさくらでは知世が桜にあげてたり、小狼が桜にあげようとしてたりする他男性陣が片っ端から家事万能だったりしてやっぱ愛と家族の新しい在り方を模索する素晴らしい漫画だよとか思ってしまう今日この頃ですが、因みに私はこれ書いてる時点までで義理以外、あげた事も貰った事もマジで皆無と言う深刻さでして、ここまで来ると徹夜明け寝不足ナチュラルハイの様なイービルな高揚感負の達成感に見舞われます。先日、高校の同級生集団で某大学の文化祭に行き皆で心理テストを受けたのですが、全員、「攻撃性」が平均以上を示したのはともかく、うら若き男女なのに「恋愛欲(三次元)」がハンパじゃない低さを示すという、オタク文化と日本の将来に対する示唆に富んだ結果が出たそのテストの最中、「素敵な異性と歩きたいですか?」との質問事項に「素敵なキャラと歩きたいよ」と呟きながら迷わず×を付けた●●さんに万歳!万歳!!バンザァ〜〜イッ!!!

 

 んで話の本題は高校2年のバレンタインからホワイトデーにかけての事でして、上記の同級生集団(漫研+文学=漫文連合。●●氏は他部なので居ない)が、バレンタイン&ホワイトデー記念に各自御菓子を制作し部室お茶会を開く運びになりました。が、家庭食生活環境が普通じゃなかったり母が高齢だったりと諸事情により、それまで御菓子作りなどというモダンな事をした経験がないので一体どうしようかと困ってた私の脳裏に毒電波が飛来しました。

(うーん、何作ろう……)
(……ベッコウ飴なら作れそう……)
(でも、ただ砂糖とかして固めるだけじゃつまらないな……)
(何か入れると良いかも……)
(そうだ、
青海苔とカツオブシを入れよう!)
(きっと良い風味がするに違い無いぞぉ)

 この時マジで良いアイデアだと思い込んだ私は、その夜、この時期に突然御菓子作り出すのもなんなので、家族が寝静まった後に起き出して台所に向かいました。

 砂糖(上白糖)を器に出し、それに早速カツオブシと青海苔を混ぜると、真っ白な砂糖に緑と黄のアクセントが散らばり或る種の雅を感じましたが雅だったのはそこまで、おたまに砂糖のせてガスコンロの直火に豪快に掲げたら、まるで理科の実験で硫黄を熱して融かす時の様に縮みながら黒く変色していやーコゲるコゲる。後に知ったのですがベッコウ飴作るには「ザラメ糖」とかじゃなきゃ駄目だそうです。しかし当時の私はンな事知らないし第一うちには上白糖しか無かったからとにかく作業続行、何とか焦げさせまいと火力変えたり水混ぜたりしても全然駄目で、そのうち台所にはカツオブシ+青海苔+砂糖の香りとコゲコゲ異臭が深く静かな殺意を帯びて漂い出し吐き気さえしてくる中、コゲまくる砂糖を見て「砂糖分子を構成する炭素・酸素・水素。酸素と水素が水となって抜けて炭素が残るんだね」などと化学的に感動する私により、原爆関連展示会に「爆心地から300mの所にあった黒焦げの弁当箱」「原爆の熱で融けてくっ付いたビール瓶」とかと一緒に「爆心地から500mにあった飴」とか言って展示されそうな、コールタールの様に黒くて粘着質な物にカツオブシと青海苔が混じった謎の消し炭が量産され、試しに食べてみると、決して言葉では形容できない独特の味と香りが大脳に広がりましたが、凄まじく不味いと言う訳ではなかったので、眠くて判断力の低下した私はよし、これを持って行こうと決心してその夜はもう寝ました。

 

 翌日の放課後、私が部室でその物体を出したものの、皆さん宇宙人からの贈り物でも見るかの様に怖がるばかりで全然食べようとしません。

部員「これ食物じゃないよー」
私「大丈夫だってば。食べられるって。死なないって」
部員「……何でカツオブシ入ってんの?」
「だって思い付いたんだもん!」

そんな中、唯一食して見てくれた桜桜(にざくら)は、独特の低くボソボソとした声で「いただきます」の代わりに「じゃあ、むこうの世界に行って来るから……」と言い一口かじったきり何も言ってくれませんでした。

 結局そのブツは殆ど全部余り、せっかくだから自分で食い尽くそうと試みるも吐き気がして断念した私に、「悪いおじさんがチョコをあげよう」と言いながら小袋入りのチョコを配りまくる平均以上に怪しい先輩(オス)が目に入り追加ダメージが加えられましたが、関係者の性別を伏せたまま描写可能なバレンタイン&ホワイトデーの想ひ出というのも面白いのか惨めなのか分からんものですなぁ。