ヤン坊マー坊の妖精物語

                はゃ

 

 

 昔々(『十年一昔』という言葉から察するに、約20年程前かもしれません)、あるところに、二人の男の子がいました。

 片方の男の子(仮にここではヤッくんとします)は非常に活発で、スポオツ各種が得意な男の子でした。

 もう1人は、(マッくんという仮名を付けておきます)非常に内気で、外で遊ぶよりも家の中で本を読んだり、お絵かきをすることを好むような子供でした。

 彼らは幼馴染でしたが、互いにいがみ合っていました。

 ある程度年を取ってから知り合った関係だったらもう少し妥協して付き合うとか、それが無理なら、なるべく接触を持たない様にするとか、対抗手段が考えられたのでしょうが「幼馴染」という関係が、それを不可能にしていました。

 それをお互いの親の言葉を借りて説明すると、分かりやすくなるでしょうか。

 

Yの親「Y、お隣のマッくんは家庭科の課題で

    マルチ人形を作って賞をもらったのに、

    何でYは暴れるばかりで

    ケロちゃん人形も満足に作れないの!?」

 

Mの親「M、ヤッくんは州対抗破壊活動でMVPを貰ったのに、

    何であんたはろりぷにイラストを描く位しか能がないの?」

 

 そうやってお互い比べられたお陰で彼らの間にいがみ合いが生まれたのは無理もありませんでした。

 

 しかし、いがみ合っていたというものの、残念ながら流血沙汰には至らず、日々は流れていきました。

 ヤッくんは、そのマッシヴな体格と並外れた運動能力を持って、プロ野球選手になり、毎年年末ヂャンボ宝くじを当てるより多い給料を稼ぐようになっていました。

 一方、マッくんは、幼い頃から描き続けたロリプニイラストが評判になり、猫耳の代名詞とも言えるような有名えろげキャラクターデザイナーとなり、富豪番付にも名前が載るような金持ちになりました。

 

 実は、ヤッくんはそのじょっくすちっくな肩書きからはあまり想像出来ない事ですが、かなりのげえまあ、特にえろげえまあだったのです。

 その彼が、野球選手を引退して、えろげ会社を設立しました。

 知名度が無い替わりにお金はある会社だったので、手っ取り早くヘッドハンティング、分かりやすく言うと引き抜きでスタッフを集めました。

 その中には、人気キャラクターデザイナーである、マッくんも含まれていました。

 『仕事が趣味』と言って憚らないマッくんは、社会情勢には全く無知だったため、自分を引き抜いた会社がヤッくんの物だとは知らなかったのです。

 ヤッくんの作った会社の商品は、次々とヒットを飛ばしました。

 初めは哲学的な匂いもする暗い話とロリキャラで注目を集め、次第に感動路線の話の物を作るという王道の展開で一般への知名度を上げる一方、別名義の会社も設立し、そちらでは斬新かつ、法規制を物ともしない商品で(ここら辺の所は、適当に察してください(^^;)マニア人気も維持していきました。

 ヤッくんは、もの凄く嬉しかった事と思います。

 お金は儲かる一方ですし、人気げえむデザイナーの皆さんは自分の手中にあるようなものなのです。

 しかも、自分が心の中でやってみたいと思っていたインモラル的なギャルゲエが、自分の指示で作られているのです。

 

 しかし、その幸福も長くは続きませんでした。

 マッくんが、自分のいる会社の社長がヤッくんだと知ってしまったのです。

 マッくんは、悩みました。

 自分が憎んでいたヤッくんの為に、自分は仕事をしていたのか・・・!

 いくら仕事の虫だとは言っても、いえ、だからこそ、自分の仕事にプライドを持っているマッくんは、

悩み続け、そのうちに仕事の質が落ちていきました。

 仕事の質が落ちてしまっては、人気が持続するわけがありません(・・・多分・・・・・・)。

 結局、マッくんはヤッくんの会社を去り、その翌年に亡くなりました。

 下戸だったのに、中毒になるほどアルコールに溺れ、酔ってはヤッくんへの恨みを繰り返す、寂しい死に様だったといいます。

 

 その事を知ったヤッくんは、泣きました。

 野球選手の引退発表の時も(ファン心理を計算したこともあって)泣いた彼ですが、マッくんの死には、心から涙を流しました。

 慟哭、と言っても過言ではないくらいでした。

 心理的には、いがみ合っていた彼らですが、ヤッくんは真にマッくんのファンだったのでしょう。

 

 そのころから、ヤッくんは自分が以前とは違って心からえろげえをぷれえしても楽しめなくなった事に気付きました。

 自分が指図して作ったものは勿論のこと、人の作った物を遊んでも、仕事、或いは勉強としてしか見られなくなっていたのです。

 たまには、昔の感動に浸ってみようとマッくんが製作に関わったげえむを出してきても、マッくんに対する後悔の念で、涙で曇って画面を見ることが出来ないのです。

 もともと、スポルツ以外にえろげしか趣味が無かったヤッくんは生きる気力をなくして、寝込んでしまいました。

(中には、『それならスポルツに励めばいいんじゃないか』と思われる方もいらっしゃるでしょうが、「父さん、それは言わない約束よ☆」ではなくて、ヤッくんの引退理由は『事故で治らない大怪我を負ってしまったため』という無意味な裏設定があるのでご心配なく!) 

 

 ・・・それから、妖精さんとなった二人が再会したのは、

 数ヵ月後のことだったといいます・・・・・・。

 

              ende

 

・・・こんな物を、1時間かけて書く私って・・・(滂沱)。

 

 

(蓬注:ある文化圏では、一生貞潔を守り通すと妖精さんになれると考えられているそうです)