ツアーパーティー

 〜卒業旅行へ行こう〜

(サターン&プレステ・

  4人同時プレイ怪恋愛シュミュレーションボードゲーム)

 

 

 よく「ギャルゲーは沢山あるのに、美少年ゲーは『アンジェ』しか無い」等、女性向ゲームが無いと言われますが良く考えるとそうでもないものでして、アンジェの模倣ゲーも(マイナーですが)何本か出ていますし、あのFFだって7あたりから一部から「公認ホモ」と言われる様にやおい描いてくれオーラをビシバシ放ってたり、コミケのゲームスペースは殆ど女性ばかりだったりしまして、それを考えると今のゲーム界は主に「オタク男女と一般男性」によって成っており一般女性は入る余地が少ないのかしらと思いますが、今回紹介するのはやおい姉ちゃん達に静かなブームを引き起こした4人同時プレイ怪恋愛シュミレーションボードゲーム通称「ツアパ」です。

 まず、大まかなシステムですが、プレイする1〜4人が性別・名前・姿を設定しそれぞれの自機キャラを作成、その後CPU操る恋愛対象キャラ男女各8人のうち登場させる数人を決定しスタート。基本的には双六みたいな感じでして、卒業旅行に行った自機キャラ達が旅館「つたや」を中心にマップ上を移動し、ウロウロしてる恋愛対象キャラと接触し好感度を高めて行き、最後の告白シーンで結果が出ます。

 ここまで聞くと結構マトモそうですが、異性にも同性にもアプローチ可という一点により特殊層のハートを鷲掴みにしてしまった訳でして、しかも「隠し要素として同性も落とせる」のではなく、相手が異性でも同性でも全く同じに落とせるどころか好感度の上がり方・台詞・照れ方・恥らい方まで全て一緒という徹底ぶりで、取説には「同性も落とせます」などとは全く書かれておらずまるでやおい雑誌の様な大前提が堂々とそそり立っております。

 この時点で既に只者じゃないのデスが、或る意味でそれよりも破滅的要素が未だ未だ溢れていまして、舞台は日本の温泉町なのに「イベント場」や「スポーツ場」等の実写取込み背景に何故か東京ドームや国技館、ヨーロッパのカフェ等が使われておりますが、遂に秋葉原駅前のバスケ場まで出て来た瞬間、私は癒しを感じました。

 そして、このゲームの最強チャームポイントは、狂気の台詞回しデス。天使兄ちゃん(お助けキャラ)「卵の殻が上手く剥けないのは炭酸ガスのせいです」「郵便番号は正しく書きましょう」などと常軌を逸した台詞を吐いてパラメータを高めてくれるのも凄いですが、絶叫しながら縄持って登場する全身黒タイツでピンク髪の角刈りストーカー親父(お邪魔キャラ)を考え付いたスタッフの深層心理に抑圧されていた物は一体何なのかしらと遥かな想いを巡らせながらも最後の告白シーンで失敗すると迷子幼児(お邪魔)に「幸せになるなら受信料払ってからにしてくだちゃい」など言われ、俺言葉の悪魔姉ちゃん(お邪魔)が途轍も無くマトモに見えてしまいました。

 更にこのゲーム、自機キャラが全く喋らないので初対面でも恋愛対象キャラが一方的に喋り捲るのですが、デートイベントでは一体何があったのか全く描写されずに別れの一言のみ喋るようになっていまして、デート失敗だと「もう誘わないでくれ」「失敗は成功の素です」等と唐突に言われ一体何が起こったのかしらと思いつつパラメータ高めて今度は成功すると“言動も理論的でクールな異常に負けず嫌いですぐムキになるちょっとシニカルなサラリーマン”(取説より)という非常に矛盾した人格の伊勢進平26才に「キスしてくれるのかい?」と言われちゃいましたがその時は男キャラで攻略中でしたのでその場にいた一同大喜び。

 

 総じて、一般人がやっても面白くも何とも無いでしょうが、奇ゲーとやおいに免疫のある人にとっては極上の一本と言えるでしょう。私はこのゲームの存在を、高校の文学部仲間の藍澤(仮名)に教わったんデスが、藍澤がこのゲームを知った隔月刊やおい小説雑誌「エクリプス」を見せて頂いた所、

「きゃ〜ホモが二組〜」

「ハッテン場〜」

などと編集人達がツアパで無邪気に喜ぶライブ漫画が載っており、あんな楽しそうな職場良いなぁと思っちゃいましたが、因みに私や藍澤が居た高校の文学部で、ふとした事から本物のホモ雑誌を見る機会が有ったのですがやおいとの余りの格差に愕然としてしまった18の想い出でしたとさ……。