バルクスラッシュやってみました

(セガサターン・恋愛育成3Dロボットシューティング)

 

 

 深夜アニメで「ナビゲーターの小娘が『右です』とか『目標に接近』とか喋り捲くるギャルゲーシューティング」のCMを目撃、うーん末期的だなぁと思ってたら

「くぉの下手クソォ!!」

と言う、ナビというよか鬼教官的に支配的で勇ましい雄叫びが私の心の琴線を鷲掴みにしてしまったのをはっきりと感じ、愕然としたのはギャルゲーバブル華やかなりし高校の頃でした。

 青春って何だろう。

 その後このCMの事は記憶の小箱の隅に埋もれていたのだが……。

 数ヶ月後、隔月刊ゲーム批評を読んでいたら小さな欄外に「バルクスラッシュ――恋愛育成3Dロボットシューティング、高得点を取るとナビゲーターの女の子が喜び、ゲームが進行するにつれ恋愛度はどんどん高まっていくが、緊張感がどんどん薄れていく怪作」とあるのを発見。まさかこりゃあの「くぉの下手クソォ!!」か!?

 中古屋で「バルクスラッシュ」を探してみたら……

「ホントにあのCMのゲームだよ……」

しかも……

「サ、サタコレにー!!」

これが、私とバルクとの因果な出会いでしたとさ。

 その後大学に入り、ふとした事から遂にバルクスラッシュを買ってしまいました。日本円で1980円でした。

 スイッチを入れるといきなり白い背景に青い自機、赤いタイトル文字が眩しい清涼飲料水の缶の様に爽やかなタイトル画面が夏っぽい音楽と共に現れまして、暫く放置するとナデシコのOPに良く似たデモアニメが始まるこのゲームの中核を成すのはナビゲーターシステムでして、全7面にナビゲーターが1人ずつ隠れており発見して同乗させ、ラスボスを倒した時点で同乗してたナビは次プレイ時からは最初から乗せられる、というものなのですが、問題はその7人のうち正規の軍人は3人しかおらず後の4人は盗賊やアイドル等通りすがりの馬の骨であるという事実デス。盗賊に「役に立つから乗せてけ」とか言われてホントに乗せて行ってしまうのは軍人と言うより桃太郎デスが、取り敢えず普通にスタートして1面でデフォルト(ときメモでいう藤崎)のキャラである後輩軍人を拾いますとまぁ喋る喋る。「右方向です」「前方です」最初は前後左右しか言えませんが、レベルが上がると「前方12時方向です」とかマニアックな方向指示になり、更に一応ギャルゲーなので戦闘中にどんどん歯の浮く様な台詞を吐く様になり、ゴレンジャーの悪役みたいに品の無い姿をしたボスと殺し合ってる真っ最中に

「伍長(主人公君)は結婚について考えたりしますか?」とか言い放った時は思わず解脱しました。

 一応ストーリーはありまして、「悪のファシズム帝国が敗戦しその民は各国に分散されたが、いわれ無き差別を受け続け遂に差別に抗する為、反乱を起こす。主人公の幼馴染であるリーゼンは、父が帝国の元幹部だったので反乱に参加、主人公は鎮圧側に回る」という意外に重厚な設定で、ラストで一気に話が暴走します。ラスボス機に乗ったリーゼンと主人公は突如世界を語り始め、

「世界とは、人々が互いのモラルを高めあって云々」

「それが出来れば私はこんな所に居ないわ云々」

崇高かつベタなやり取りの後戦闘に入り勝つとリーゼンは爆死します。差別を受けた亡国の民が反乱を起こして、でも結局鎮圧されて、ついでに幼馴染も死ぬ……良く考えたらベルセルク的に救い様の無い悲劇ですが、作品全体から滲み出るデスクリ並のチグハグさと直後に続く怪エンディングにより台無しとなっております。エンディング冒頭、「諸惑星連合軍が電撃的に」敵幹部を特殊部隊で銃殺しあっさり反乱が収まり、その後に流れるクリア時に同乗してたナビゲーターのエンディングムービーが有無を言わさぬパワフルさです。デフォルトの後輩軍人の場合、リーゼンの四十九日も済んでないと思われるのにいきなり主人公君との教会結婚式でして「まさかドレスのすそ踏んでコケるってオチじゃないでしょうね」という蓬の悪い予感が見事に当たったり、通りすがりの王族なら「私達は所詮結ばれない身分。ならばあの世で幸せになります」と父王の前で二人仲良く自殺を試みたり、アイドルの場合コンサート会場まで自機で運んであげたらそれに嫉妬したファンに集団リンチされたり、攻撃食らう度に「アウチ」だの「オーノー」だの叫ぶのが堪らなく煩いエキゾチック軍人に三又掛けられたりします。

 因みにナビのうち1人は隠しキャラでして、他の6人をクリアするとメカメカしい最終面要塞の中に何故かある花壇に現れて「私の力はあなたと共に」と意味不明な事を言うルリそっくりな眼鏡っ子を素性が一切分からないまま同乗させてしまうのは桃太郎を超えて某宮崎被告的デス。パターン通り「ミステリアス少女」を狙ったのでしょうが「頭が痛い」「チェッ」「消えちゃえ」「うきゃははは」等支離滅裂な台詞を吐き捲くる「正体不明童女」と成り果てておりましたが、それでも蓬は「エンディングで正体が判明するんだ。きっとそうだ」と思ってリーゼン爆死させてさぁエンディングムービー……10年後、主人公君との間に娘まで生まれて幸せそうに暮らすルリもどき……結局最後までホントに何処の馬の骨だか分からずに終わりやがりまして、こうなったら徹底的に調べてやろうとアクセスした製作元ハドソンのホームページには「これさえ分かればエンディングは感動だ」とか豪語する人間関係表がありましたが、ルリもどきが全く出て来ないばかりか、エンディングで射殺される時に名前と後頭部しか出て来ない敵幹部の無駄に細かい設定があったり、果ては「ヤン」「タチカワ」など取説にもゲーム中にも一切出てこない大量の謎の人名が主人公君と「ライバル」「苛立ち」等のやんごとなき関係にある事ばかり判明しより一層切なくなりました。

 ゲーム自体の出来は十分上々なのに、「ツアーパーティー」や「デスクリムゾン」に匹敵する程の世界観のチグハグさを見ると、流石にボンバーマン作ってる人達だけあるなぁと感心させられるのですが、隠しキャラその2でコンバット越前が出て来て「前方12時方向だぜ」「謎の物体が来るぞ、気を付けろぉ」「平均以上だぜ」などと喋り捲った末にエンディングで主人公君を焼きビーフン屋ですびすの湯に連れてった後で「せっかくだから」とか言いながらキッチリとホモって欲しいと思ったのは私だけかしら?