ドラえもん最終回の噂
『その7』
(提供者:にょ! 様)
(出所:不明)
その7は捻りが無くストレートですが、しみじみとして悪く無いデス。
ある夏の午後、太陽がのび太の部屋に差し込んでくる。
「暑いなぁ」のび太が言う。
「そうだねえ、暑いねえ」ドラえもんが答える。
それから会話が続かない。
静かな静かな時間・・・・セミの鳴き声だけが部屋にこだまする。
昨日、ドラえもんから聞いた。
今日未来に帰ってしまうこと、そして2度と戻ってこられないことを・・昨日の夜はあんなに泣いた。ドラえもんにすがりつき泣いた。
しかし、今日ののび太はそんな様子もなくおとなしい。
なにも聞かなかったかの様に・・・・
ドラえもんの説明はこうだった。
時空法が改正されたのだ。
未来の世界では深刻な過去への介入問題が討議されていた。
タイムマシンが一般の家庭にも普及し皆が自由に過去へ移動する。
そして、必ず同行する事を義務づけられていた「ガイドロボット」を持たない人々が過去へ移動し、道具を使い、未来を変えてしまっていた。
今までは時間の修復作用によって大惨事を免れていた。
しかし、重大な事件が起き過去での道具の利用が禁止になった。
今まで、ガイドロボットとしてドラえもんは存在した。
しかし、反ロボット派の議員から未来での道具の使用を禁止するので有ればロボットも道具であると考えるべきだとの意見が出て、それが議会で承認されてしまったという事であった。
「ドラえもんは道具じゃない!!」
のび太は叫んだ。
「僕だってそう思ってるよ。でも、仕方の無いことなんだ」
ドラえもんはうつむきながらそう答えた。
「僕は主人の命令に従うようにプログラムされている。主人はのび太くんじゃない。セワシくんなんだ。」
現実がのび太にのしかかる。
そうなんだ・・・ドラえもんはセワシくんの友達として買ってこられたんだ。
僕はセワシくんから借りただけなんだ・・
心の中でそう考える。でも、体はドラえもんにすがりつき泣いていた。
セワシくんが机からでてきた。
「さぁ、ドラえもん準備はできたかい?未来へ帰ろう」
セワシが言う。
「本当につれていっちゃうの?」のび太が聞く。
「僕だってつらいんだ。でも、つれて帰らないとドラえもんはタイムパトロールによって破壊されちゃうんだ」
セワシが答える。
・・・・・・・・・・・・・・・しばらく沈黙が続いた。
のび太が口を開く。
「お願い、もう1日だけドラえもんを貸して。お別れパーティーをしたいんだ。」
ドラえもんが言う
「のび太くん・・・・ありがとう」
「しょうがないなぁ、1日だけだよ。明日また迎えに来るからね」
セワシくんはそういうとまた机の引き出しに戻っていった。
ドラえもんとのび太はみんなの家を回ってドラえもんが未来に帰ることを伝えた。
もちろんみんな悲しみを隠せなかった。
でも、もう仕方の無いことだった。
のび太の家に帰るとパパとママがパーティーの用意をしてくれていた。
ドラえもんの前には大量のどら焼きが置かれている。
「ドラちゃん、今まで本当にありがとう」ママが言う。
「ドラえもんのおかげで楽しかったよ」パパが言う。
「ありがとう・・・ありがとう・・・・」
ドラえもんの目に涙が浮かんでくる。
でも、のび太からはさよならの言葉は無かった・・・・
2人は部屋に居る。
「のび太くん、一緒に寝よう」
「うん」
「のび太くん、今まで本当にありがとう。僕は幸せだった。」
「うん」
「のび太くん、これからは1人でがんばるんだよ」
「うん」
のび太の目には涙が浮かんでいた。もう、「うん」としか言えないほど悲しみに満ちている。
月明かりの下でのび太が口を開いた。
「ドラえもん、僕は今までなにをしてきたんだろう。ドラえもんが手助けをしてくれていたのに、なにも変わってない。めんどくさいこと、いやなことを道具の力で逃げていただけだった」
「でも、明日からドラえもんは居ないんだよね。僕も変わらなきゃいけないよね、そうだよねドラえもん」
「うん・・・・・・・」
ドラえもんの目から涙がこぼれ落ちた。
「もう遅いから寝ようか、ドラえもん」
「うん・・・・・・・・・」
のび太が寝た後、ドラえもんがそっとささやく。
「ごめんね、のび太くん」
ドラえもんはのび太に内緒にしておいたことが有った。
最初に来たときに言った「のび太はジャイ子と結婚する」。
これは全くの嘘だった。
未来はそう簡単に変わらない。
ただ、のび太のやる気を起こさせるためについた嘘だった。
そして、最初の場面に戻る。
もうすぐセワシくんが迎えにくる。
「さようなら、ドラえもん」
「さようなら、のび太くん」
机が開く・・・・セワシくんが迎えに来た。
もうドラえもんはこの部屋に居ない・・・・・
その6とその7は、「時間の修復作用」という言葉が共通して出て来るので、同一の作者による作品かも知れません。