ドラえもん最終回の噂

『その2』

(提供者:にょ! 様)

(出所:不明)

 

 

 その2は少し悲しい話デス。

 

 


 

 いつものようにのび太は学校にいた。

 それはいつものような晴れた一日の始まりでもある。

 学校ではおなじみのジャイアンがいる。

 そして、自慢好きのスネ夫、おしとやかなしずかちゃん。いつもどおりの風景だった。

 そして、この日もおなじみのメンバーからストーリーが始まろうしていた。

 ジャイアンにのび太がいじめられ、それをドラえもんが助けてくれる。

 周知の展開だ。案の定、学校でのび太がジャイアンにいじめられた。

 何をやっても泣くだけののび太。けっして、自分では解決しようとしない。

 そして、いつものようにドラえもんにすがろうとする。いつもの光景、いつもの展開。

 

 それは見ている者だけでなく、のび太自身そう感じていた。

『このままでいいのか。』

 ドラえもんに頼りきっている自分自身に苛立ちを隠せない。

 そして、家に着く頃にはジャイアンに仕返しをしようとしていた感情が、いつのまにか消えていた。

『ドラえもんがいなけりゃ何もできない。』

 のび太はそれを認めたくなかった。誰に言われた訳でもない。

でも、誰もが考えてる事実だった。

『今日からは自分のことは自分で解決する。』

 新たなのび太の決意である。

 負けっぱなしののび太。この境遇から抜け出さなければ、将来の自分さえ哀れに見える。

 

 とりあえず、ドラえもんにその決意を伝えようとした・・・・・。ドラえもんがいない。どら焼きを買いに町に出ているのだろうか。

 いつもの部屋で待つのび太。両手を首の下に置き、足を組みながら横たわる。

 横たわる首の辺りには座布団を丸めて枕代わりにしている。 いつものスタイル。

 そう、何もかもがのび太は同じ「スタイル」。

 それが気に入らなかったのか、のび太は寝返りを打つ。

『それにしても、おそいなぁドラえもん・・・』

 

 いつのまにか寝ていた。もう日も暮れている。なのに、ドラえもんは帰ってこない。

 何かがおかしい。いつもと違う。のび太は不安に駆られる。

 どこかで、道に迷っているのかもしれない。

 しっかりしているようで、頼りない一面を持つドラえもん。のび太が一番良く知っている。

 辺りは暗くなってきた。 不安はさらに大きく募る。

 その時『のび太、ごはんですよ。』ママの声がした。

 『そうだ、ママに聞こう。』

 不安に駆られるのび太、じっとしてはいられなかった。

 ただ、妙な不安だけが募る。

 『ママ、ドラえもんはどこへ行ったの?』

 のび太が聞く。

『・・・のびちゃん?どうしたの?ドラえもんって何?』

 血の気が引く。

 のび太にはママの言っている意味がわからない。

『ドラえもんだよ、ドラえもん。いつもいるじゃない。どうしちゃったの、ママ? 』

『のびちゃん、そんな冗談はママ嫌いです。早くご飯を食べなさい。』

 のび太は愕然としている。

『そんなはずはない。』

 のび太は家を飛び出した。

 

 のび太はしずかちゃんの家に行った。

 もしかしたらドラえもんがいるかもしれない、そう思ったのだ。

『ドラえもん来てない?』

 しずかちゃんに聞いた。

『何それ?ドラえもんって何かしら?』

 話にならない。

 スネ夫の家に行く。ジャイアンの家に行く。

『ドラえもん来てない?』

『ドラえもん来てない?』

 のび太は至る所を探した。

 公園、学校、商店街・・・。だが、誰ひとりとしてドラえもんのことを知らない。

 どら焼き屋さんさえ知らない。

 のび太は泣きながら家へ帰った。

 

 のび太はご飯も食べずに、部屋で一人になっていた。

『誰もドラえもんのことを知らない・・。』

 ただ、それだけが気になって仕方がない。

 みんなドラえもんのことを忘れたのだろうか。

 それとも、自分が幻覚を見ていたのだろうか。

 もしかすると、別の世界に来たのかもしれない。

 色々な考えが浮かぶ。

『そうだ、机の引き出しを見ればいいんだ。』

 そこにはタイムマシンがある。

 思えば全てはここから始まった。ドラえもんはここから現れたのだ。

 この引き出しを開けると全てがわかる。

 のび太は引き出しに手をかけた。そして、引き出しを一気に引く。 ・・・・・。

 引き出しの中には本が詰まっていた。タイムマシンなんてものは無い。

 のび太の望むものは何ひとつなかった。

 

 ピッピッピッピッピッピ。静かな空間にデジタル音が鳴り響く。電子機器の音である。

 真白な風景。白いカーテンからもれる光。そして、それを照らす白い壁。何もかもが白い。

 ピッピッピッピッピッピ。電子音が鳴り響く。緑色をした波形がモニタに映っている。

 心拍数、脈拍が小刻みに緑の山谷をつくる。・・・あれは何年前だろう。

 子供の頃、買ったばかりの自転車。

 ふらついた自転車に乗った子供がトラックに跳ねられた。

 道沿いの花壇がクッションとなり、その子は運良く助かった。

 でも、その子は植物人間として人生を過ごしている。

 ピッピッピッピッピッピ。電子音が鳴り響く。

 ふと、その空間に別の音が紛れ込む。白い服を着た女性が部屋に入ってきたためだ。

『今日は良い天気ですね。カーテンを開けておきますよ。』

 白い光が流れ込む。

 その光は年老いた1体の体を照らし出した。

 老人はその光にも動じず、ただ一点を見詰めている。

 ただ白い天井を見つめている。いつもと同じ風景、同じスタイル・・・。

 その老人はいつも同じ生活を演じなければならない。

 

おしまい

 


 

 

 全ては、植物状態のび太の脳内にだけ存在した幻影だった……という訳デスね……。しかし、前半部ののび太の決意って伏線かと思いきや、実は何でも無かったのね。